ニッポンのみなさ~ん!お米、食べてます?

日本人にとって理想の食事とは「穀物:野菜:肉・魚=5:2:1」
あると食事療法士の辻野将之さんは言います。
友人である鈴木達也さんは、合鴨農法で米作りに取り組む方。
おふたりに、私たちの食卓に欠かせない穀物=お米のことをうかがいました。

お米が支える長寿日本

辻野ここ50年くらいでお米の消費量は半減した※といわれています。農水省のデータではひとり1日1合強となりますが、食品ロスも考慮すると、ひとり1日1合も食べていないんですね。鈴木さんはお米を作っている側として実感はありますか。

鈴木うちは農薬も化学肥料も使わない合鴨農法の米を作っているので、玄米で食べたいという人が多いんですが、確かに白米のお客さんは減っていますね。特に若い人は忙しそうで、ご飯を炊くと、お味噌汁も作らなきゃいけない、おかずも用意しなきゃいけないからって。

辻野だったらパスタをゆでてソースをからめて、ひと皿できあがり、という方が楽ですよね。今はパンとかラーメンとか、お米のほかにいくらでも食べるものがありますから。宮沢賢治の『雨ニモマケズ』には「1日に玄米4合と味噌と少しの野菜を食べ」とあります。昭和初期の日本の兵隊さんへの配給は1日白米6合だったそうです。1日1合が平均のわれわれからしたら、えらいいっぱい食べてるなという印象ですが、玄米4合は普通の人より控えめにしよう、ということ。昔の人は、けっこう米ばっかり食べてるんですね。

鈴木今よりおかずが少ないというのもあるでしょうし。昔は誰でも自分で食べるものは自分で育てていました。今はずいぶん機械化されていますが、農業は身体を動かしてする作業が多い。身体を動かせば、お腹も空いたでしょうし。

辻野よく働いてお米をいっぱい食べていた世代が、今の長寿日本をつくったわけですね。

もっとお米を食べないと!

鈴木安曇野市では給食でご飯が出るんですが、僕らが子どもの頃は、ご飯は一食も出なかった。そういう世代が親になって、お米を食べないのが当たり前のようになっている。

辻野僕の患者さんのなかにも、お米を1食も食べてないという方がいらっしゃいます。そしてそのことを自覚していないんですよ。試しに昨日1日の食卓を思い出してもらうと、そこでみなさんハッとされる。

鈴木それほど無自覚なんですね。

辻野消費量は減って、値段は下がって、このままではお米を作る農家がいなくなってしまいますよ。まずはわれわれ消費者が意識してお米を食べなければ。

鈴木昔は集落ごとに田植えとか稲刈りとか川ざらいもして、みんなで協力しあいながらお米を作っていました。そのエネルギー源は、自分の作ったお米なんです。いい循環じゃないですか。農村を維持するため、水保全のため、そういう意味からもお米作りを絶やしてはいけないと思います。

健康的な食べ方とは

辻野人間は穀物を主食とする雑食性の動物です。歯を見ればわかりますが※、穀物:野菜:肉または魚を5:2:1の割合で食べるのが良いバランスです。すべての生き物は自分が住んでいる環境にあるものを食べて生きています。その土地でその季節になるものを食べるのが本来で、それを「身土不二」と呼んでいますが、日本では伝統的に作られてきたお米を食べるのが、やっぱり一番合っているんです。

鈴木安曇野は、その土地のものだけで生活できます。塩はよそから持ってこないといけないけど。水があって、米や野菜が育って、さらに発酵させて味噌や漬物やお酒にしたり。本当に恵まれていると思います。

辻野こちらの人は、自然と身土不二が実践できているから健康的です。僕が食事指導する対象者は、こっちにはいないんですよ(笑)。

食卓のきほん 5:2:1 穀物5 野菜2 肉・魚1

お米が主食の食卓に

鈴木どうしたらもっとみなさんにお米を食べてもらえるでしょう。

辻野戦後世代が給食でパンに慣らされたように、給食でご飯を食べるのは大事だと思います。重湯とかおかゆといった離乳食もそうですが、小さいうちからご飯を食べてもらって、好きになってもらう。あとはどれだけ家庭でお米を炊くか。

鈴木お母さんたちが、子どもにおいしいご飯を作ってあげられればいいですね。田舎の食文化も、日本の伝統食もそうですが、私たちの食卓はおかずとなる食材が豊富で、お米が主食でこそ成り立つ。

辻野まさに、お米は主食なんです。パンを主食にすると、バターをぬって牛乳を飲んでベーコンエッグを添えて、というように、動物性のものが増えてしまう。パンが悪いわけではなく、身体へ負担をかけるものが食卓に多くなってしまう。お米を食べると5:2:1のバランスが整いやすいんです。

鈴木ちゃんとした台所が機能していれば、自然とお米を食べたいと思うのでしょうけど、優先順位が変わってきて、どこか見失っているものがあります。お米を食べたいって思えるような食卓にしないといけないですね。

本文注釈)
※農林水産省のデータでは、国民ひとり1年あたりの米の消費量は、昭和40年度が111.7kg、平成25年度が56.9kg
※人間の歯は全部で32本あり、形と機能で3種類に分けられる。臼歯:切歯:犬葉=20:8:4の割合に基づいた「5:2:1」が理想の食事バランスとなる
  • 鈴木達也(すずきたつや)

    1966年埼玉県出身、安曇野市在住。信州大学農学部卒業後、安曇野で農業を学び、1995年に独立。当時としては先進的な有機農業に取り組む。現在は「ひげたつ農園」当主、「バジルクラブ」代表として農産物や加工品づくりを行う。2010年から行っている「教育ファーム」では、地元の小学生が取り組む循環農の指導をしている。また、農閑期には福源酒造の杜氏となる。

  • 辻野将之(つじのまさゆき)

    1977年奈良県生まれ、安曇野市在住。食事療法士。菅野賢一医学博士のもとで食事療法を学び、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の国家資格を取得。東洋医学を基礎とした生活習慣改善指導を含めた食事指導や、「星のや 軽井沢」などで滞在型の体質改善プログラムを行っている。著書に『食養生』(技術評論社)、『お米を食べるだけでこんなにやせた』(講談社)など。